第28章 悪意の善意
一口、二口とキリが茶を飲んだのを見て、確かにこのまま帰るのもせっかくもてなしてくれた老婆に失礼だったかと思い直す。
キリ本人がそう言うのであればと、シカマルも再び卓袱台に向かって湯呑みに手を伸ばした。
コンコンッ
突然、後ろから聞こえてきたノックの音に振り返れば、そこには銀髪でマスクで半分以上顔を覆いながら、こちらに微笑みを向けている男の姿があった。
カカシ「いやいや、こんなところからお邪魔しちゃってすいませんね」
ガラリと窓を開けて「いやぁ面目無い」と、頭をかきながらカカシは中に入ってくる。
シカ「は!? カカシ先生! 何してんすか」
カカシ「あーいやぁね? シカクさんからちょっと頼まれて様子を見に来たんだよ」
今より数時間前。
カカシは里の待機所で、うんうんと唸るシカクに出会った。
どうしたのかと話を聞けば、どうにもキリ達のことを心配していて、カカシ自身も気に掛かったのでシカクの代わりに二人の様子を見に行く事になったのである。
そして、いざカカシが任務場所へと赴けば、キリの姿もシカマルの姿も見当たらず。さらには戦った形跡まであったため、カカシの背筋に、ひやりとしたものが流れた。
それからは、二人の匂いを辿ってここまで来たが、必死で探していた二人を見つけたと思えば、のんきに茶を飲んでいて。
がくりと、カカシは肩を落とした。
カカシ(まあ、無事だったからいいんだけどね)
ずずっと茶を飲んでいるキリを見て、カカシはその異変に気付く。
カカシ「キリ!! 飲むな!!!」