第28章 悪意の善意
キリ「……一戦交えるつもりはないようだったから、事を荒立てたくなくて」
少し困った様子で話すキリを見て、シカマルの全身に怒りが広がっていく。
シカ「婆さん! どういうことだよ! なんでキリに毒なんか……」
シカマルが老婆に問い詰めれば、老婆はくしゃりと眉間にしわを寄せた。
フミ「その子は、自里で大量虐殺をしただけじゃなく、この里をも狙っているんだよ。このまま生かしておけば、いずれ木ノ葉にも被害が出る」
そう言い捨てた老婆の言葉が、すぐに理解できなかった。
大量虐殺? 木ノ葉をも狙う?
誰が、誰を。
自らの体を盾にして、シカマルやヒナタを守ってくれたキリが?
何時間だって、シカマルの修行についていてくれるキリが?
いつだって、人の事しか考えていなくて、他人を気遣ってばかりのキリが?
そんなキリが木ノ葉を、自分達を狙っていると。この老婆は言ったのか。
シカマルの中に激しい憤りが渦を巻いた。
シカ「キリがそんな事するわけねーだろうが!!!」
カカシ「待て、シカマル」
カカシは今にも、老婆に掴みかかっていきそうなシカマルの肩をおさえる。
カカシ「気持ちはわかるが……、あとはこっちで身柄を預かるよ」
ちらりとカカシがキリへ視線を向ければ、シカマルはぐっとそれ以上の言葉を飲み込んで、キリのもとへ向かった。