第28章 悪意の善意
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先ほどの場所から、ものの数分で老婆の家には到着した。
キリ、シカ「「お邪魔します」」
フミ「さあさあ、上がっておいで」
平屋の古い造りであるが、柱が太く、どこか厳かな雰囲気もある家だった。
中に入り、息を吸えば、ふわりと畳のにおいが広がる。
客間らしき部屋に通されると、客用の座布団を出され、キリとシカマルはそこへ腰をおろす。
フミ「古い家で申し訳ないね」
「広いばかりで、お化けでも出そうだろう?」と軽口を言いながら、フミはキリから受け取った荷物の荷ほどきを始めた。
キリ「いえ……奈良のお家とよく似ています。とても、立派な家です」
フミ「っ……! ありがとうね、お嬢ちゃん……」
フミは荷ほどきをしていた手をとめて、何かを考え込むような素振りを見せたが、ふるふると首を振って、一つの茶葉が入った缶を手に取り、立ち上がった。
フミ「お茶を用意してくるから、少し待っていてくれるかい。ゆっくりしておいでね」
そう言って、奥へ入っていったフミを二人は見送る。
キリと二人きりになって、シカマルは大きく息をついた。
一度腰をおろすと、その途端に身体の力が抜けたことがわかった。
そして急激に襲ってくる疲労感と、鉛のように重くなる身体。
どうやら自分で思っていた以上に無理をしていたらしい。それにキリは、どこまで気がついていたのだろうか。
ふと視線を感じて、隣を見るとキリの青い瞳にシカマルがうつる。
キリ「……中心部に戻ったら、まずシカクさんに報告する。それから後は、11班で処理するから。あなたは家に戻って休んで」
それから少し間があって、キリの視線が僅かに伏せた。
キリ「……巻き込んで、ごめんなさい」
少し弱くなったキリの声に、シカマルはため息をつく。
シカ「あのな、元はと言えば俺が勝手について来ただけだろーが。お前は何も悪くねーよ、謝んな」