第28章 悪意の善意
フミは歳をとってから、家を頻繁に出ることが少し面倒になっていた。
週に一度、まとめて買い物をするようになり、その荷物には、たんまりと食材等が詰まっていた。
ついつい買い過ぎて大きくなった荷物は、とても運べないというほどではないが、それでも相当な重量をもっている。
それを無表情で少し冷たい声をした彼女は、事も無げに抱えてくれた。
キリ「大丈夫です」
そう言ってにこりともしない彼女は、冷たい態度とは裏腹に、大事そうに荷物を抱えている。
フミ「……そう……かい。ありがとうね」
キリは、眉を下げてそう言った老婆に一度頷いてから、シカマルの方へと振り返る。
キリ「いきましょう」
シカ「……おう」
シカマルは自分を待つ二人のもとへと足を進める。
シカ「キリ、それ貸せ」
キリの隣まで来て、キリの抱えている荷物をとろうとすると、反してキリはその荷物を離そうとしない。
キリ「…………」
シカ「なんだよ?」
視線を下げたキリに、じっと足を見つめられたのちに、膝で軽く足を小突かれて、シカマルの足に痛みが走る。
シカ「いっっ」
キリ「……あなたは少し休んで」
そう言ってスタスタと老婆と共に歩いていくキリの後を追いながら、シカマルは心の中で一つため息をついた。
シカ(……はぁ、かっこわりー)
シカマルが不甲斐ない事ももちろんだが、キリもキリで男らし過ぎるのではないだろうか。
歩いていくキリの後ろ姿を見て、先ほどの汗をふいてくれていたキリとのやり取りが、シカマルの胸につっかえる。
シカ(あーくそっ)
……余計なことをしなければ良かった。せっかく、キリが歩み寄ってくれたのに。
それを意図してはいないが、拒絶した形になってしまった。