第28章 悪意の善意
これまでシカマルと行動を共にしてわかったが、彼は意外と弱音を吐かない。
めんどくせーと悪態をつくことはよくあるが、出来ない、もう無理だと。そんな弱音を、特にここ一番のところで言うことは絶対に無かった。
周囲からは成績も悪く、やる気のない奴だと、散々聞いているが。
実際は、粘り強く我慢強い精神を持っている。
そんなシカマルがこの状況でもう限界だと、自ら言うことはないだろう。
今は里内へ戻ることよりも、彼を休ませる方を優先させるべきだ。
キリは老婆に聞こえないように、小声でシカマルに伝える。
キリ「……もう追っ手もいない、少しぐらい大丈夫でしょう」
シカ「でもよ」
その返事も聞かずに、キリは老婆のもとへと歩み寄っていく。
キリ「お婆さん、少しだけお邪魔させて頂いてもいいですか」
フミ「……! ああ、ああ。もちろん」
頷いたフミが、足元へ置いていた荷物をとろうとしたので、キリはその荷物を両腕に抱えた。
キリ「家まで、持たせて下さい」
フミ「え……でも、随分と……重いだろうに」