第28章 悪意の善意
シカ「すんません、ちょっと今は急いでるんで」
フミ「そうかい……そうだね。引き止めて悪かったね」
シカ「っ……」
残念そうに肩を落として、眉を下げながら微笑む老婆がとても寂しそうに見えて。シカマルの胸に罪悪感が生まれる。
ふとキリの方を見ると、視線が混じった後、キリは来た道の方へと振り向いた。
キリ(……追っ手の気配はない)
もう、少し前から追っ手の気配は完全に途絶えている。
キリ達もこれからは人気のある道以外は進まないし、さすがに彼らも里内で派手に戦闘を始めるつもりはないようだ。
キリ(それに……)
ちらりとキリがシカマルへ視線を向ければ、足が小さく震えているのがわかる。
キリ(あのペースに、ついてこれるとは思わなかった)
最初は飛ばしていたが、シカマルの限界が見えたらスピードを緩めるつもりでいた。
もしそこで追っ手に追いつかれるようなら、キリが戦い、シカマルを逃す心づもりもあった。
しかしシカマルは、もうまともに吸えていないであろうところまで呼吸が荒くなろうとも、踏み込む足がふらついていようとも、最後まで、速度を緩める事なくついてきた。
シカマルも態度こそ気丈に振る舞ってはいるが、いまだに止まることのない足の震えからしても、限界なのだろう。
キリ(……本当に、よくついてきた……)
寂しげな老婆を前にして、困った様子のシカマルを見て、キリは思いを馳せる。