第27章 草刈り機
直接手をかけたのはキリだ。同郷の死の原因は間違いなくキリだろう。
でも、そこにはキリの意思はないはずだ。
おびただしい量の薬物投与によって起こった事故だ。
シカク(……誰もが予期せぬ悲しい事故だ)
全てを許せとは言わない、しかしキリだけを責める事も違うのではないか。
その事故で、傷付いたのは被害にあった里の者達だけではない。
シカク(あいつも被害者じゃねーか……)
キリは心にどれ程の傷を抱えているのか。
シカクが考えるだけでもその傷は限りなく深く、重いものだった。
シカク(いい子だよ……キリは)
担当上忍の欲目を除いても、キリがいい子である事を自信を持って言える。
頭も良く、優秀なその実力に驕ることもなく従順で。
冷たいような態度も遠過ぎる人との距離も、決してそれがキリの本質ではない事が今ではわかる。
その頭の良さでキリは木ノ葉の里でどう思われているかなど、言わずとも感じとっていた。
その圧力に、いつだって黙って一人、耐え忍んでいたのだ。
シカクの息子と同じ年であるまだ12歳のキリが、全く子供らしい姿を見せはしない。
最近になってやっと、やっとあの色のない瞳に、無機質な表情に少しの変化が見られるようになったのだ。