第27章 草刈り機
さらにそれも、上忍であり奈良という名家に生まれて里へ貢献し続けて来たシカクとそのツテを持ってしても、中々尻尾を掴めないほどの地位にいる者の可能性が高い。
シカクはぐしゃりと、中身のない資料を握り潰した。
シカク(なんだってキリを……)
そこまで執拗に狙う必要があるのか。
キリが故郷の樹の里で、両親や同郷達を手にかけた事は知っている。
それでも。
確かに「そんな事があったな」では済まされない事だ。
だが話を聞けば、樹の里は日常的な薬物の投与によって能力の向上をはかっていたそうだ。
あまり他里の風習や、やり方に文句を言うつもりは無いが、キリに使用されていた薬の量は決して生半可なものではなかった。
幼い頃からの薬物投与で身体を慣らしていたといっても、樹の里で他の者に使っている量と比べて、キリのそれは完全な致死量だ。
キリの暴走は薬物投与直後に起こったらしい。
さらに最悪の事態は重なり、その時は主力である精鋭メンバーに重要任務が与えられ、樹の里を離れていた。
その結果、即座に対応出来る者が居らず、たくさんの命が失われた。
その場にいた仲間、両親、キリを止める為に戦った同郷達、計17人が息を引き取り、その他重軽傷者が多数。
現場は酷い有り様だったそうだ。
確かに、辛いだろう。悲しいだろう。
たが、果たして。そこにキリの非はあるのだろうか。