第26章 両手に花
あと少しすれば、日付も変わるだろうという時にガラリとドアは開いた。
「ただいま」というシカクの声が響いて、二人は玄関へと向かう。
シカ、ヨシノ「「おかえり」」
シカク「なんだ、シカマル。まだ起きてたのか」
ごそごそと靴を脱ぐシカクは、困った様子で顔を見合わせている二人に気がついた。
シカク「? 何かあったか?」
ヨシノ「それが、なんだかキリの様子が変でね。ずっと居間にいるんだけど……」
シカク「キリが?」
シカ「どうしたのか聞いても、何も言わねーしよ」
そう言う困り顔の二人を見て、シカクが様子を見に家へ上がろうとすると、視界の端にひょっこりと奥から顔を出したキリの姿が映った。
シカク「キリ」
シカクの視線を辿って、シカマルとヨシノも後ろを振り返れば、居間から出て来たキリがそわそわと絶えずに視線を少し動かしていた。
シカク「キリ? どうした?」
すぐに、シカクも普段と異なるその態度に異変を感じ、心配そうにキリへと歩み寄る。
キリ「シカクさん、あの」
シカク「なんだ?」
キリ「あの、……」
シカク「?」
心配そうに、キリの様子を伺うシカクに、キリの体温が上昇したのが自分でもわかった。
さらりと、言うはずだった言葉が、予定通りにはいかずに喉の奥で留まってしまっている。
中途半端な事をしたせいで、シカクも、シカマルもヨシノもこちらに注目していて、尚更言い辛さが増していった。