第26章 両手に花
いまだ仕事中のシカクを除いて、三人での夕食を終えた後。シカマルとヨシノは互いに顔を見合わせる。
ヨシノ(キリは、一体どうしたんだい)
シカ(わかんねー、あいつ今日ずっと様子がおかしいんだよ)
普段は食事が終われば、即座に部屋へ戻るでもなく、かといって長く滞在するでもなく。
失礼がないようにと絶妙な間をとってから自然に部屋へと戻っていくキリが、今日は居間へ留まり続けている。
ヨシノ「キリ? まだ寝ないのかい?」
キリ「!! は、はい」
声をかけると、びくりと肩をすくませてどこか落ち着きのないキリに、シカマルとヨシノはなおさら疑問符が頭に浮かぶ。
ヨシノたちの雰囲気を感じとったのか、キリはハッとして眉を少し下げた。
キリ「すみません、邪魔でしたか」
ヨシノ「いやいや! 全然そんなことはないよ」
「キリの好きなところにいてくれればいい」と、恐縮しているキリに言えば、「ありがとうございます」と小さく頭を下げられた。
その後もそわそわと所在なさげにしているキリを見かねて、とりあえず座るように進言すると、キリは大人しくそれに従った。
ヨシノ(本当にどうしたんだろうね……)
シカ(……わかんねー)
ちらりと、二人はキリを盗み見る。
座ったまま、どこか思いつめている様子のキリに心配になって、何かあったのかと途中で聞き出そうとしたのだが。
「ない」と答えられては、もうこちらからはどうしてあげる事も出来ずに、見守るしかない。