第26章 両手に花
キリの担当上忍になってしまったシカクにとって、せめて手のかからない生徒であることは、常に心掛けていた。
任務や修行の時には、持てる力を最大限に使い、出来得る限り速やかにこなした。
せっかく時間を割いてシカクが修業中に教えてくれたのに、その日に習得出来ぬままに終わってしまった時。
あとから、一人で猛練習をした。シカクに次、見てもらえる時にまでには出来るようになっていなければと。
そんなキリをシカクは必ず褒めてくれたが、そもそもだ。
いくら手がかからなかろうが、キリといることでシカクは至る所から悪く言われているのだ。
更には、キリ自身の事で今、結局こうして、シカクに迷惑をかけてしまっている。情報がない中での犯人探しは、砂の中にある砂金を探しあてるようなものだろう。
キリ(…………)
シカクがキリにしてくれた〈嬉しい事〉はたくさんあった。
キリが嬉しかったことをシカクに返そうと思っても。
キリよりも遥か遠く、忍としての実力を持っているシカクに対して、まさか良く出来たと褒める事も、新たな技術を教えることも、出来るはずがなくて。
シカクの指導のもと、稼いだ僅かばかりの任務報酬を渡したところで、シカクはきっと受け取ってくれないだろう。
考えるほどに自分がシカクに対して出来ることなどなく、全く八方塞がりである。
キリ(……あっ)
他にも、キリが嬉しく思っていること。それが頭に思い浮かぶ。