第26章 両手に花
食事を終えたシカマルとキリは、ある部屋へと訪れる。
部屋に一歩入るなり、すりすりとキリの足もとに駆け寄ってくる子鹿。
その頭を少しなでてやってから、キリは手慣れた手つきで腹に巻かれた包帯を解いていく。
子鹿の化膿止めの製薬は、ついこの間、シカクからどこに出しても恥ずかしくない出来だと、お墨付きをもらった。
そして今では、もう任せても大丈夫だろうと、シカクは治療の時間にここへ来る事はなく、治療はシカマルとキリの二人で行うようになっていた。
子鹿の手当てをしながら、キリは内心ため息をつく。
キリ(与えられてばかり……)
本当に、シカクには頭が上がらないほどに、たくさんのものをもらっている。
シカクの戦い方や任務時の言動は柔軟かつ的確で、汲めども尽きぬ策を巡らせる。
そんなシカクに修行をみてもらってから、キリの視野と能力をさらに広げてみせた。
キリ(それだけじゃない)
シカクが与えてくれたのは、忍としての生き方だけではない。
頭に、にかっと笑っていつでも自分を見守ってくれていたシカクの姿が思い浮かぶ。