第26章 両手に花
キリは以前一度、もう捜索はしなくてもいい。自分でしっかり危機管理をして、もし再び襲われたなら、その時は捕獲するように努めるからと。
そう言ったのだが、頑としてシカクはそれを受け入れることはなかった。
もしものことが起きたら遅いのだと、今やれることはやっておくべきだと、そう言ってシカクから頭をなでられては、キリもそれ以上何も言うことが出来なかった。
ありがたいことなのだと、わかってはいる。
しかし、ただでさえシカクの家でお世話になっている身の上で、さらにシカクの仕事まで余計に増やしていることが、どうしてもキリの心を重くさせた。
シカ「親父が勝手にやってんだ、お前は昼寝でもして待ってりゃいいんだよ」
突如、隣で食事をしていたシカマルからそう言われて、キリは頭をあげる。
キリ「………」
シカ「お前の態度見てりゃわかる。気にすんな」
ちらりと、シカマルを一瞥する。
シカ「なんだ?」
キリ「………はぁ」
キリ(シカクさんだけじゃない、あなたも……)
夜の間、ずっと警戒を怠らないシカマルもまた、充分な睡眠を取れていない。
以前にも増して、あくびをする回数や、眠たそうにしていることが増えている。
シカマルの優しさもまた、キリの心を重くする要因であった。
シカ「な、なんだよ」
励ましたつもりだったのに、自分の顔を見てため息をついたキリに、シカマルは首を傾げていた。