第26章 両手に花
「「「「いただきます」」」」
シカク、シカマル、ヨシノの三人と一緒に、キリはどこか少しぎこちなさそうにしながらも、手を合わせる。
朝食には、昨晩同様に玉子焼きが出されている。おそらくこれはキリの事を配慮してくれたヨシノの優しさだろう。
その優しさが、朝からじんわりとキリの胸に広がる。
ヨシノ「ほら、あんた。目が閉じてるよ」
ついっとヨシノに肩をつつかれて、箸を持ったまま目を閉じようとしていたシカクはハッと目を開けた。
シカク「おぉ、あぶねぇ」
いかんいかんと首を振って、朝食をかきこみ、あっという間にそれをたいらげれば、シカクは早々に席を立った。
シカク「ごちそーさん、母ちゃん今日も遅くなる」
ばたばたと出かけていったシカクは、ここ最近朝早くに家を出て、夜遅くに帰宅をすることが多かった。
そんなシカクのすがたを見て、ふっとキリの心が重くなる。
シカクが激務に追われているのも、それによって疲労が溜まっているのが見えるのも、その全ての原因はキリにあるのだ。
キリ(私のせいで……)
キリが何者かに自宅で襲われてから、すでに二週間近くが経とうとしていた。
犯人の足どりを辿っているシカクは、中々そのしっぽをつかめないことに悪態をつきながらも、全力を尽くして捜索をしてくれている。
最近では、いつまでも見つからない犯人の行方捜索に、なおさら力を入れているようで。こうしてシカクは家にあまり帰ることなく仕事に追われている。