第25章 旅芸人
シカク「おー、ありゃ旅芸人だな」
なかなか里へ来ることはないが、彼らはこうして自由気ままに各地に訪れているのだと、人だかりの中心が見えているらしいシカクは説明してくれた。
キリ「旅芸人……」
キリも樹の里で、一度だけ彼らを見たことがあった。
いくつもの玉を投げたり、音楽に合わせて華麗に舞う彼らの姿に、幼いキリは感動を覚えた記憶がある。
先ほどよりももう少し首を長くして、その旅芸人を見ようとするが、いかんせんキリの身長ではどうにもならない事らしい。
シカク「なんだ、見えねーのか」
よっ、とシカクはキリの体を持ち上げる。
キリ「!」
唐突にシカクに肩車をされて、周囲にいた通行人の注目を集めるかたちとなった。
キリ(すごく見られてる……)
キリ「シ、シカクさん、みんなが見っ……」
シカク「どうだ?見えたか?」
そう言って、上を見上げたシカクはにかっと優しい笑顔をキリへと向ける。
キリ「うっ……み、みえます」
いつもよりも、かなり高くなったキリの視界からは、旅芸人の姿をばっちりと見ることが出来た。