第25章 旅芸人
しかし、現実はそう易しくはない。
シカ「ぐぁっ」
腹にもろに入ったキリの蹴り。決意から、ごろごろとシカマルが地面を転がるまで、わずか十秒ほどだった。
シカ「ごほっ、あ、っは、っく……」
キリ「……」
絶え絶えになっている息と、あの重い攻撃をノーガードで受けたあまりの痛みに腹を押さえていれば、少し困った様子のキリと、苦笑いを浮かべているシカクの姿が見えた。
シカ(いっ……てぇぇー)
先ほど見せてくれた明るい表情のキリが見たかったのに、世の中、そう上手くはいかないものなのだ。
その後も修行を続け、シカクから終了の合図があったのは、日が傾いて来た頃だった。
シカク「今日はここまでにするか」
キリ「はい」
シカ「はぁ、はっ、……おー」
涼しい顔をしている二人とは対照的に、一人汗をかいて土に汚れているシカマル。
どうにかその重い腰を上げて、二人のもとへと歩いて行く。
三人で家への帰路を歩いていれば、途中で何やら人だかりが出来ているのに気がついた。
シカ「なんだ?」
足を止めたシカマルがその人だかりへと視線を向けるが、見えるのは人の頭のみで、中心となるものは見られなかった。
そして、どうやらシカマルよりも少し背の高いキリでも同様であるらしい。キリもシカマルと同じように首を長くしているが、努力もむなしく終わっていた。