第24章 ひな鳥
…………………………
ーーその後ーー
ヨシノ「そういえば、いままで食事はどうしてたんだい?」
キリ「えっと……」
キリはいつも身につけているポーチの中から、袋を取り出した。
そこからザラリと、薄くて四角い薬剤が出てくる。
シカク「それは?」
覗き込んでくる三人は、一体なんの薬なのかと首を傾げている。
キリ「樹の里で私達が常備しているものです。豊富な栄養素を含んでいます。効力も非常に遅緩的で、体内に長い間蓄積されます」
ヨシノ「まさか、あんた……」
呆然としているヨシノをよそに、キリは説明を続ける。
キリ「もともと、私はそこまで食事をとらなくても大丈夫なように体質を改善しています。あとは水分さえ取れば、事足ります」
この栄養剤を一つ飲めば、10日近く身体を維持する事ができる。樹の里自慢の栄養剤である。
だが、それも里を出る際に持っていただけしかない。そのため、それ以降の食事はどうするか考えものだったが。
淡々と説明をするキリに、ヨシノはふるふると体を震わせた。
それを見て、瞬時に耳を塞いだシカクとシカマル。
そのあと、すぐにヨシノの怒号が飛んだ。
ヨシノ「こんなもので食事を済ませるなんて、体に悪いでしょうが!!!」
キリ「でも、これには栄養が……」
ヨシノ「栄養だけが問題じゃないでしょう!! まだ子どもで体も出来てないうちから、こんなもので生活するなんて……しっかり食べなくてどうするんだい!」
キリを叱りつければ、戸惑いを見せるキリ。ヨシノは小さくため息をついた。
ヨシノ(この子は本当に……自分の事は無頓着なんだね)
ヨシノ「普通に食べることも出来るんだね?」
キリ「は、はい」
キリがここへ来る以前は、みんなと食事をとっていた。そもそもこの栄養剤は普段使いではなく、本来は任務中や病気をした時に使用していたものだ。
ヨシノ「これからはきちんと食べなさい。いいね」
こくこくと頷くキリを、シカクとシカマルは苦い顔をしながら見守っていた。