第24章 ひな鳥
それと同時に、キリに突き上げるような気持ちが熱をもって広がり、胸があつくなった。
久しぶりに、まともな食事を口にした。
そして、キリが好んでいた玉子焼きをよく作ってくれた優しい母を、両親との優しい時間を思い出した。
あの日から、いつも思い出すのは自分が手をかけた両親の最後の時で。
両親の優しい笑顔なんて、もうずっと思い出せなくて。
久しぶりに浮かんだそれは、いつもと異なる胸の痛みをともなった。
キリ「……おいしい、です」
ぎゅっと強くこぶしを握って、涙が出そうになるのを堪える。
樹の里で、愛されていた幸せな時間が確かにあった。しかし、それを壊したのも自分で。どちらの気持ちもキリの中に存在し、複雑に絡み合っていく。
すると、ふわりと強く握っていた左手が何かに包まれる。
シカ「そんな顔でメシは食うもんじゃねーよ」
ぶっきらぼうにそう言って、シカマルはそっと右手をキリの手に重ねた。
シカマルが握った手は、キリの心を明るい方へ引っ張っていくようだった。
シカ「他のも、食えば」
その言葉を聞いて、キリが下げていた顔を上げると、優しく頷くシカクとヨシノの姿がうつる。