第24章 ひな鳥
シカク(っ!!!)
「食べるか⁉ 食べるのか⁉」と、危うく声に出しそうになった。それをどうにか大人の余裕で抑え込んで、シカクは微笑みの表情のままに、キリの出方をうかがう。
そしてついに。
数十分間つかまれたままの玉子焼きは、キリの口へと導かれていった。
奈良家「「「っ!!!」」」
奈良家(((食べた……っ!!)))
この家にキリが住むようになって、十日が過ぎる。頑なに食事を拒んでいたあのキリが、初めてここで食事を口にした。
ヨシノは作った料理を食べてくれた喜びが湧いて出てきて、玉子焼きをひとつ箸にとった。
ヨシノ「キリ、もうひとつどうだい?」
にこりと笑って、キリに差し出せば、数秒の間キリは動きを止めたが、素直にそれを受け入れた。
ヨシノ(~っ)
ヨシノはもぐもぐと口を動かしているキリを抱きしめてしまいそうな衝動を必死でおさえる。
ここで、キリの気を削いではいけない。
シカ(っ! お、俺も……)
いそいそと箸を手にとったシカマルの隣から、小さく声が聞こえてきた。
キリ「……おいしい」
キリの口の中に、ほんのり優しい味が広がった。