第24章 ひな鳥
シカク(いくぞ)
その合図に、こくりと頷いたヨシノをみて、シカクは奴に箸をのばした。
スッとつかまれた一つの玉子焼きが、シカクのもとへと運ばれていく。
奈良家(((見てる………!!)))
いまだ皿に固定されていたキリの視線は、シカクがつかんだ一切れの玉子焼きに移って、その後を追っていった。
シカク(くっ……)
シカクの長い人生で、これほど、玉子焼きを食べる事に緊張したことはあっただろうか。
ごくりと生唾を飲み込んで、シカクは玉子焼きを口へと放り込んだ。
もぐもぐと口を動かすシカクから、キリの視線は動かない。
シカク「いやぁ、やっぱり母ちゃんの玉子焼きは最高だ」
シカク(どうだ……⁉)
そう言えば、キリの視線は、またゆっくりと玉子焼きの乗った皿に戻っていった。
シカク(みんなが食べてからじゃないと、キリも食べにくいんじゃないのか)
シカ、ヨシノ((!!))
ひょいひょいと、シカマルとヨシノも玉子焼きをつかむと、キリからの視線を感じた。
シカ、ヨシノ((うっ……))
なんなのだろう。何を言われているわけでもないのに、この凄まじい緊張感は。
先ほど、先陣をきったシカクは、そんな二人の心情が手に取るようにわかって、うんうんと頷いた。