第24章 ひな鳥
シカ「うめぇ」
ヨシノ「卵、たくさん余っててね。まだ食べたかったらすぐに出来るからね」
「たくさんあるから、気にせずに食べなさい」と、キリに強い念を込めてヨシノは告げる。
それを知ってか知らずか、ジッと皿を見つめるキリ。
追撃と言わんばかりに、シカマルがもう一切れ、口に入れる。
普段はあまり甘いものを好まないシカマルであるが、玉子焼きに限っては、このほんのりと広がる甘さが、なんとも美味しいと感じる。
シカ「この甘さが美味いんだよな」
そう言った瞬間、キリはピクリと反応を見せた。
奈良家(((!!)))
ヨシノ(どっちだい、だし?だし派なのかい。今すぐ作ろうか)
シカ(いや、甘い方に反応したのかもしれねー)
シカク(俺は母ちゃんの玉子焼きは両方好きだ)
ヨシノ(父ちゃんの好みは今聞いてないよ。また今度だしも作ったげるから)
こほん、と咳払いをしてシカクは茶をすする。
この緊急任務を完遂するには、今、情報収集が非常に重要なのだ。
シカクの咳払いに「心得た」と言わんばかりに、シカマルから頼もしい視線が返ってくる。
シカク「俺はだし巻きも好きだけどな」
シカ「まぁ、それもうまいけどよ。このほんのり甘いのがいいんじゃねーか」
すると「ほんのり甘い」と言う単語にキリはまた小さく反応を示した。
シカ(おっ! 合ってる。母ちゃん、甘い方で合ってるぞ)
ヨシノ(良かった……でも、食べはしないね)
完全にキリがこの玉子焼きを意識しているのはわかるのだが、キリは箸を取ろうとしない。
すでに半分以上、なくなっている玉子焼きを見て、シカクは強行突破に出た。