第24章 ひな鳥
少し慌てた様子のシカマルに、にやにやとした視線を送るシカクとヨシノ。
不機嫌そうに顔をそらしたシカマルを冷やかしながら、ヨシノは料理の乗った皿を運んでいく。
その全てが運び終えて、四人分が席についたところで。
三人はキリの視線が、ある一点に集中していることに気が付いた。
奈良家(((……見てる。めちゃくちゃ見てる)))
ヨシノ(何、ちょっとあんた。何かおかしいところがあった?)
シカク(いや、母ちゃんの作るメシはいつも完璧だ)
ちらりと三人は、キリの様子を伺う。
おそらく、この皿が机に置かれたその時から、視線を外すことのないキリ。
今まで一度も食事に手をつけたことがなく、気になる素振りすら見せたことのなかったキリの視線は今、皿に乗った艶のある玉子焼きに一心に注がれている。
シカ(もしかして、食べたいんじゃねーか)
シカク、ヨシノ((!!))
シカク(と、とにかく。食べ進めて様子を見るぞ)
シカ(お、おう)
ヨシノ(そ、そうね)
そろりとキリを盗み見ながら、手を合わせる。
奈良家「「「……いただきます」」」
こうして、そわそわと非常に落ち着きのない夕食が始まった。
各種、並べられた料理に箸をつける三人。
シカク「母ちゃんのメシはいつも美味いな」
そう言ってにこりと笑うシカクに、ヨシノも同様ににこりと笑みを返した。
ヨシノ「まだまだたくさんあるからね」
笑顔でそんなやり取りを繰り広げていた二人に、強くアイコンタクトがかわされる。