第24章 ひな鳥
※物語の中の( )内の台詞は心の声です。
奈良一家の最強の心の会話をお楽しみ下さい。
とことこと、キリは一人で奈良家への道のりを歩く。
さきほどの出来事を、キリはまだ上手く把握出来ずにいた。
何故だろう。なぜ急にあのような展開になったのか。
アカデミーの頃、演習試合でキリはヒナタに大きな傷を負わせてしまった。
彼女がそれを責めるというのならば、もちろんキリは全力でつぐなうつもりであった。
キリ(そう……。それは、そうだけど……)
怪我の責任をとって、自分の言うことを聞いてくれと言ったヒナタの口からは。
キリが、自分自身のことを許せと。そして、もう少し周囲にいる誰かに甘えるようにと。
そう、言ったのだ。
キリ(………え…と、どう…すれば……?)
キリは、既にヒナタに言ってしまった。
言うことを聞いてくれというヒナタに、はっきり「わかった」と返事をしたのだ。
では、もちろんヒナタの言うことを聞かなくてはいけないだろう。
約束を、交わしたのだから。
ヒナタにつぐなうために、キリはそれに答え……
キリ(つぐない……?)
いや、少し待ってくれないか。
キリがそもそも、約束をしたのは、ヒナタに怪我をさせてしまったつぐないのためだ。
仮にこの約束を果たしたとして、ヒナタへのつぐないには、とてもならないだろう。
キリが、自分自身を許して、周囲に甘えることがヒナタにとって一体なんの得になるというのだ。
キリ(聞き間違えた……?)