第23章 小さな花
帰り道を無言のままに、キリとヒナタは歩く。
ヒナタ「……キリちゃん」
勇気を出して呼んだその声に、キリは顔だけを向けて応える。
ヒナタ「ア、アカデミーの演習試合でわたしが怪我をした事、まだ気にしてる……よね?」
キリ「……あれは、私が加減をわからなかったから……」
気にしないわけがない。あの後、ヒナタとチョウジはしばらくアカデミーに来ることはなかった。
その全ての責任はキリにあるのだから。
ヒナタ「わ、わたし……。ほんとは、あれ、ひ、ひどいと思うの……! だから」
ヒナタ(キリちゃん、ごめんなさい)
ヒナタ「だっだから、わたしの言うこと、聞いてくれませんか」
責めるヒナタをキリは真っ直ぐに見つめた。
キリ「わかった。何?」
ヒナタ「少し、ほんの少しでいいから、自分のこと許してあげて。誰かに、少しでいいから、甘えてください」
キリ「えっ?」
あまりの予想の斜め上をいった返答に、回転が早いはずのキリの思考回路は停止した。
ヒナタ「そ、それと、あの、良ければ、わっわたしと、お友達になってください」
先ほどまでは思い詰めたように、そして今は頬を赤らめて。ヒナタの表情は大忙しだ。
ヒナタ「よ、よろしくお願いします……!」
キリの返事も待たずにヒナタはぺこりと頭を下げる。
「じ、じゃあ」と、言い逃げをしていったヒナタの姿が見えなくなるまで、キリは呆然とその背中を見つめていた。