第23章 小さな花
ヒナタ「ずっと、わたしに、大丈夫だから気にしないでって。それは、えっと。キリちゃんが、キリちゃんのことで、わたしが気に病んでいるのを気にしてくれてるってことで……」
キリ(……やめて)
もうやめてくれと、思った。
ヒナタの純粋で疑いを知らない言葉たちが、キリに重りを増やしていくようで。
しかし、そんなキリの心を知らないヒナタは、また無垢な瞳をキリへと向ける。
ヒナタ「えっと、だから、キリちゃんはずっとわたしの心配をしてくれてるんだよ」
キリ「私が優しいわけない」
ヒナタ「キリちゃんは、優しい人、だよ」
自分の目を見て、そう言ったヒナタに、先ほどからずっと痛みを伴っていた胸がまた小さく軋む。
キリ「あなたは勘違いしてる」
ヒナタ「……どうして?」
キリを気遣うような、彼女らしい柔らかな声音だった。
ヒナタ「……キリちゃんは自分が優しいと、嫌なの?」
キリ「!」
ヒナタ「認めたくないって、言ってるみたい……」
大きくて白い瞳が、キリを映す。
まるで、自分の考えを見透かされているみたいで、キリはその視線から逃げた。
ヒナタ「自分を……許せないの?」
その言葉が静まった夜の道にやたらと響いたような気がした。