第23章 小さな花
ヒナタ「キリちゃんは……笑ったことなかった。わたしだけじゃなくて、わたし以外の誰かが、例えば簡単なことが出来なかったとしても、絶対に」
確かに、アカデミーでは何かを失敗をした時、嘲笑う者はいた。子供特有のからかいなのだろう。
その対象に、ヒナタやナルトが上げられる事は多かったかもしれない。
ヒナタ「そ、それに、わたしとチョウジくんと、キリちゃんで演習試合をした時も。演習で怪我をしたのは……弱くて相手にならなかったわたしが悪いのに、キリちゃんは謝ってくれた。何度も」
キリ「それは私が木ノ葉のルールを知らなかったからでしょう」
キリが樹の里と同様の演習を行い、その度合いを間違え、相手を負傷させたに過ぎない。
ヒナタ「そうだとしても……人を傷付けたことで、自分に傷をつくる人が、優しくないわけないよ」
キリ「っ!」
ヒナタ「それに、今だって……」
ちらりとこちらを見て、視線を下げてしまったヒナタの様子をうかがうように、キリは少し首を傾げた。
キリ「……どうしたの」
ヒナタ「その、わ、わたし。喋るのも苦手で、いつも伝えたいこともうまく伝えられなくて、すぐみんなをイライラさせちゃうんだけど……」
自分の悪い所を言いにくそうに、申し訳なさそうに、それでもヒナタはキリの顔を見て告げた。
ヒナタ「キリちゃんは、ずっとちゃんと聞いてくれた」
確かに、しどろもどろに話すヒナタの話し方は、わかりやすいとはとても言い難い。
しかし、懸命に何かを伝えようとしていることは見てとれるので、そこは腹を立てるようなことではないだろう。
キリ「……怒るようなことではないでしょう。……ちゃんと、わかるよ」
ぽつりとそう言えば、はにかんだように笑って「ありがとう」とヒナタも小さく言葉をもらした。
ヒナタ「それに……それにね、キリちゃん今日もずっと、わたしの心配ばっかりだったよ」
キリ「?」
身に覚えがなく、キリはヒナタの言葉を待った。