第23章 小さな花
ヒナタはこれまでよりも、ずいぶんと優しい声色で語るキリに、目を丸くした。
キリ「? どうかした?」
ヒナタ「キリちゃん……変わったね。なんだか、前よりも穏やかになった」
「それに前よりもずっと話してくれるようになった」と、にこりと笑顔を見せたヒナタ。
反して、キリは嫌な焦燥感に襲われていた。
キリ(変わった…? 私が? それじゃ……それじゃ、駄目)
キリは、他人から見てもすぐにわかってしまう程に、変わってしまっていたのだろうか。
キリの心臓がどくどくと嫌な音を立てて、その速さを増した。
ヒナタ「キリちゃん? ……大丈夫?」
キリ「私は、変わったの?」
ヒナタの問いかけには答えずに問い返せば、ヒナタは戸惑いながらもその答えを探した。
ヒナタ「う、うん……。前よりも雰囲気が優しくなってる」
ヒナタ(前はもっと……近付いたら壊れてしまいそうだった……)
キリ「優しい……」
ぽつりと響いたキリの呟きに、ヒナタが反応を示した。
ヒナタ「あ、でっでも、キリちゃんは、はじめから優しかったよ……!」
キリ「……?」
そのはじめから、というのがキリがここへ来たばかりのアカデミー時代を指しているならば、彼女のお世辞は下手にも程があるのではないだろうか。
そんなキリからの訝しげな視線に気付いて、ヒナタは少し慌てた様子で続けた。
ヒナタ「ほ、本当だよ! 言葉とか、態度は少し冷たいようにも見えるけど、でも、キリちゃんはアカデミーで誰かを笑ったりしなかった」
ヒナタの言う言葉の意味が、ますますわからなくて、キリの頭には疑問が増えていく。
ヒナタ「え、えっと、わたし……どんくさくて、何も上手くは出来ないし、失敗も多いから……よくみんなに笑われちゃうんだけど……」