第23章 小さな花
ヒナタ「あ、あの…、傷、は…どう?」
「本当にごめんなさい」と消えそうな声で言われて、キリは目的もなく進めていた足を止めた。
きっとヒナタは今日まで、ずっとキリの負傷を気にしていたのだろう。
キリ「私が勝手にやったこと、あなたに非はない」
ヒナタ「で、でもっ、わたしがあの時、動けなかったから……」
キリ「私が早く刺客の存在に気付けたから、そうした。あなたが気に病むことじゃない」
まさか雷影が奇襲をかけてくるなど、誰も思いはしないだろう。
キリにしても、もう一度同じことがあれば、その時は気付くことが出来なくても何ら不思議はない。
前に入院していた時、シカマルに同じような会話をしたことを思い出す。
しばらくキリとヒナタはこの問答を繰り広げていた。だが、中々納得しないヒナタはどうやら少し、シカマルよりも頑固なところがあるらしい。
いつまでも眉を下げて、申し訳なさそうな表情を崩さないヒナタに、小さくため息をつく。
キリのため息にびくりと肩を竦ませたヒナタが視線を上げると、はじめて白くて儚いその瞳と視線が混じった。
ヒナタ「っ! キリちゃん、顔真っ青……!」