第23章 小さな花
キリ「…何の用だったの」
シカ「あ、あー。ヒナタがよ、なんかお前に話しがあるみたいで、今下に来てんだ」
キリ「……わかった」
日向ヒナタ。
実際に面会することはなかったが、彼女もまたキリが入院中に何度も病院へ足を運んだ人物であった。
誰かと話をするような気分ではとても無かったのだが、今、この家にいるよりは幾分マシであるだろう。
そう思ってキリは重たい体に鞭を打って、立ち上がる。
シカ「おい……大丈夫なのか?」
シカマルがキリを支えようして、手を引っ込めたのが分かった。
キリ「……平気」
そう言えば、心配そうにしながらもシカマルはそれ以上何も言わずに、部屋を出るキリの後に続いた。
シカクとヨシノには伝えておくからこのまま行ってこい、と言うシカマルに頷く。
シカ「無茶すんなよ」
キリ「………」
後ろから聞こえてきたその声に、気づかないフリをして外へ出た。
ドアを開ければすぐに、ヒナタはこちらの存在に気が付いて、視線を下げるとそわそわと落ち着かない様子であった。
二人の間に、小さな沈黙が訪れる。
キリ「……歩きながら、話しましょう」
その途中でどこか落ち着く場所があれば言ってもらえばいいし、と告げてからキリが歩き出すと、ヒナタも慌てて後をついてくる。
とことこと、二人で鈍足な歩みを続けていれば、今度はヒナタがこの沈黙を破った。
ヒナタ「ひ、ひさしぶりだね」
少し上ずった声でそう言われて、ちらりとヒナタを見れば、相変わらずうつ向きがちで、その頬を赤く染めていた。