第23章 小さな花
キリ(……会いたくない)
シカマルの声を聞けば更にぐらぐらと心は揺れて、胸は締め付けられるように痛む。
シカ「キリ?入るぞ」
返答のないキリを不思議に思って、中に入れば、横になっているキリの姿があった。
シカ「……寝てんのか?」
キリ「………起きてる」
少しだけ見えたキリの顔を見て、シカマルはすぐさまキリに駆け寄った。
シカ「おい!顔真っ青じゃねーか」
キリ「触らないで」
「大丈夫か」と肩を支えようとしたシカマルの手を強く払った。
シカ「悪い……。どうした?何かあったか?」
キリ(なんで……あなたが謝るの)
心配してくれたその手を、払ったのは自分の方なのに。
キリ「……ごめんなさい」
シカ「おい、本当にお前どうしたんだよ」
普段とは様子の異なるキリに、シカマルはどうすればいいのかわからず戸惑っていた。
シカ「体調わりーのか?」
熱でもあるのではないかと思って、キリの額に手を伸ばしかけて、ハッとした。
シカ(さっき、払われたばっかじゃねーか)
最近はキリの事となると、考えるよりも先に行動してしまうことが多かった。
先ほどの言動も、突然キリの部屋に訪れておいて、キリに対して無遠慮過ぎたかと反省する。けれど。
シカ(……やべ、今のはちっときた)
近づき過ぎた自分が悪かったのだが、ぱしりと払われた手が力なく垂れる。
最近では見る事も少なくなってきたキリからの露骨な拒絶に、ちくりとした痛みが広がった。
しかし、今はシカマルのこんな些細な痛みなどは気にしている場合ではない。キリに何かが起きているのは確実なのだ。
キリ「ごめ…んなさい」
シカ「いや……」
シカ(なんて顔してんだよ)
キリの青い瞳が、悲痛の色を濃く示していて、まるで自分にまでその痛みが流れてくるようだった。