第23章 小さな花
キリ(それなのに、なんて醜い……)
関わらずに在ろうと、自分はあれほど誓っていたはずだ。
それが、今。
ここに……自分の居場所があるのではないかなんて、思い上がってしまっている。
キリ(修行が終わって、ここに来るまで……私は何を思ってたの…)
家に入れば「おかえり」と迎えてくれた彼らに、嬉しく思ってしまった。
そして、おかえりと言ってくれることをキリはどこかで期待していたのだ。
厚かましく、恥を知らない自分に吐き気すら覚える。
ここ最近では、夜も落ち着いて眠れるようになってしまった。
対して、隣室にいるシカマルがあまり眠ることが出来ずに、日に日に寝不足になっていることも知っている。
彼は夜、外で物音がすれば、必ず窓を開けて周囲を確認する。
さらに、それだけに留まらず、自ら外に出てまで安全の確認をすることもあるシカマル。
なぜあなたがそこまでするのか、と思う反面。
シカマルが警戒している分、まるで自分のそれを吸い取ってくれているみたいで。
心のどこかで、安心している自分がいる。
誰かと共に過ごす安堵にも似た感情が芽生え始めていた。
それではいけない、そんなことを思っては駄目だ、と何度も何度も強く思う。
しかし、もうキリの心が、本能でそれを感じてしまっている。
あまりにもここがあたたかくて、優しすぎて、それが痛くて痛くて仕方がなかった。