第23章 小さな花
キリは一人でおこなっていた修行の手を止める。
時刻はすでに夕方になっていた。
つい最近、帰りが遅くなったことであれほど迷惑をかけたのだ。キリは少し行動を自重するべきだろう。
修行を早めに切り上げて、キリは奈良家へと足を進める。
家が近付く度に、キリの中が揺れ動く。
止まれと念じてもそれは小さく、ゆらゆらと絶えずに波打った。
ガラリとドアを開ければ、ぱたぱたと足音が近づいてくる。
ヨシノ「キリ、おかえり」
にこりと微笑むヨシノの後から、シカマルも少し気だるそうに顔を出した。
シカマル「おかえり」
キリ(止まって)
ヨシノ「もう少しで父ちゃんも帰ってくるからね、そしたらご飯だよ」
「それまでにお風呂入っておいで」と、ヨシノは修行で汚れたキリに笑いかけて、作りかけの夕食の準備へと戻る。
キリ「……はい」
風呂場へと向かうキリの足取りは重かった。
そして、ずきずきと痛むキリのそれはさらに酷くなる。
ぎゅっと握ったこぶしに力が入る。
自分の愚かさに虫唾が走った。
キリは、誰とも関わらずに在ろうと思っていた。
こんな自分を拾ってくれた木ノ葉隠れの里には恩を感じているし、その恩は木ノ葉の忍として返したいと思っている。
だから、木ノ葉の誰かが危険ならば守りもするし、木ノ葉隠れの里のために働くことは厭わない。そこに親密度は関係なく、誰であっても等しく対応するつもりだ。
ここで忍として活動する以上、誰かとある程度、共に行動することを避けられないのもわかっている。
しかし、本当の意味でキリは誰とも関わらずにいることを誓っていたのだ。