第22章 子供の宿命
キリ(どうして……ヨシノさんが泣くの)
ヨシノ「本当に、無事で良かった」
気丈なヨシノがこんな風に泣くところを初めて見た。
無視をしても冷たい態度をとっても、怒る事がなかったシカマルの怒った声を初めて聞いた。
いつだって、さらりとなんでもこなすシカクが、あんなにも汗を流して必死なところを初めて見た。
そのどれもが、自分の身を案じて、心配してなったことだというのだ。
いつから、三人はキリを探してくれていたのだろうか。
自分はここへ戻りたくないと、馬鹿みたいに川や空を見続けていただけであったのに。
そんなにも心配されると思っていなかった。
ここまで、想ってくれていると知らなかった。
ずきずきと胸の奥が痛んで仕方がなかった。
…………………………
ーーその日の夜ーー
キリは何故か、流されるままに居間で四人で眠ることになった。
4つの布団が並べられて、一人の少年が不平をもらす。
シカ「……なんで俺はここなんだよ」
ヨシノ、キリ、シカクと順に布団に入り、シカマルはシカクの横に敷かれた布団の上に立っている。
ヨシノ「父ちゃんにかわってもらいな」
「私はかわらないよ」と言って、キリに布団をかけるヨシノ。
シカク「俺はここだ。キリと俺の場所がかわることはあっても、シカマル。お前とかわることはねぇ」
「諦めろ」と言って、シカクはキリのお腹のあたりを布団ごしにぽんぽんと叩く。
川の字の真ん中で、もはやされるがままとなっているキリと目が合った。
キリ「……かわろうか?」
シカ「…………いい」
シカ(俺が親父と母ちゃんに挟まれてどうすんだよ)
すでにうとうとし始めているキリを見て、シカマルは大人しく端っこの布団に入った。