第22章 子供の宿命
容赦なく降ろされた鉄拳に、シカマルまでがつられて痛そうな表情をしている。
かなりの痛みにキリが頭をさすっていれば、シカクの額に大粒の汗が流れているのが見えた。
キリ「っ………」
キリ(シカクさんまで……どうして)
シカクとシカマルが、迷惑をかけたから腹を立てているのだと勘違い出来るほど、二人の人柄を知らないわけではなかった。
だからこそ、苦しいのだ。
目を見開いたキリに、シカクは少し眉を下げて微笑んで。ポンッと一度キリの頭を撫でた。
シカク「早く家に帰ろう。母ちゃんも心配してる」
そう言って歩き始めたシカクの後に、シカマルが続いて、こちらを振り返る。
シカ「キリ、ほら帰んぞ」
シカクも足を止めて、二人はキリが来るのを待つ。
そんな二人の姿を見て、胸が苦しくなった。
キリ(私は……木ノ葉の里で、育ったわけじゃない。みんなとずっと一緒にやってきたわけでもない。里を追い出されてここへ来たよそ者相手に、どうしてそこまで……)
どうしてそんな風に、キリへ帰ろうなんて言うのだろう。
痛む胸を押さえて、キリは二人のもとへ歩き出した。
月明かりも通さないほどの、深くて暗い森の中をかけ足に進む。