第90章 それぞれのご報告 ー猪鹿蝶編ー
口をつぐませたいのは、一度シカマルに目を向けたあと、その視線を下げた。
どうやらシカマルの「話がある」という発言は、思いのほか幼馴染二人を悩ませていたらしい。
詳しい事は直接話すつもりだったが、要らぬ気苦労をかけてしまったようだ。
シカ「あー悪い」
ぽりぽりと頭をかいて謝罪すれば、いのは小さく首を傾げた。
いの「話って何よ?」
…………………………
キリがナガレと揉めた一件をざっくりと説明して、ひとまずキリの問題は解決したこと。
そして、キリとシカマルの交際がスタートしたこと。
その二つを話していると、いのは初めずいぶんと難しい顔をして頷いていたが、後者の話からは目を輝かせていた。
くるくると表情がよく変わるものである。
キリもこれぐらい感情が分かりやすく、表に出てくれると助かるのだが。
いの「きゃー!! やだちょっとシカマルいつの間に!!」
シカ「耳が痛ぇ……」
至近距離からの歓喜の叫びが、シカマルの耳に響く。
今にも跳ねそうなぐらいに興奮している様子のいのに、シカマルは呆れ顔を見せた。
いの「シカマル」
ばっちりと視線が合ったあと、いのはとても柔らかな笑顔を浮かべた。
いの「おめでとう」
いのから心の底から祝福を受けて、すぐにチョウジの声も届く。
チョウ「シカマル、本当に良かったね」
シカ「……おう、さんきゅーな」
二人が本当に嬉しそうにするものだから、胸がむず痒さを覚える。