第90章 それぞれのご報告 ー猪鹿蝶編ー
第90話 それぞれのご報告 ー猪鹿蝶編ー
シカマルが、シカクとヨシノに交際報告をした数日後。
シカ(……もう済んだことだ)
なんとも締まりの悪い両親への交際報告となってしまったが、一応、無事に終わった。
そう、無事に終わった事にする。
決して数日経っても、思い出して恥ずかしいなんて、そんな事はないはずだ。
みんなが笑顔に溢れた報告会となったのだから。それでいいのだ。
何度もそう言い聞かせるが、シカマルは皺の寄った眉間に、手を当てる。
思い返せば、周囲と比べて、シカマルの浮き加減といったらない。
キリと何の意思も通わせていなかったのに、一人で意気込んでのアイコンタクトからの空回り。
更には、キリの制止を不安だと勘違いして、落ち着かせるようにキリの手を握った失態。
当時の自分に忠告する事が出来るなら「お前が落ち着け」の一言に尽きる。
今回の報告は、シカマルにとって軽い出来事ではなかった。
少なくともキリと付き合った日から、なんと言うべきか脳内でいくつか、シミュレーションをした程には、気合いが入っていた。
シカマルの報告後に、シカクの空気が張り詰めた時は、内心焦りを覚えた。
昔からシカマルにとって父親というは、偉大なものだ。
面と向かっては言わないが、シカクの事を男としても、父親としても尊敬している。
そんなシカクは、滅多に怒る事がない。
シカクが厳しい事を言う時は、大体シカマルのしている事が間違っている時だ。