第89章 それぞれのご報告 ーお手紙編ー
キリ「ええ。今、新技を編み出しているから、あなたと一緒に修業をしたいって」
シカ「新技……って、どんなだよ」
キリ「さぁ、それは書いてないわ」
シカ「……その辺、見てもいいか?」
「どうぞ」と、キリから渡された手紙に目を通せば、イチカはキリではなく、完全にシカマルを指名していた。
新技は必ずお前に食らわせるという、確固たる意志がそこにあって、シカマルはひとつ問いかけをする。
シカ 「あーキリ、俺らが付き合ってるって言ったか?」
キリ「え、えっと」
少しだけ、戸惑いを見せたあとに、キリはわずかな気恥ずかしさを滲ませて頷いた。
キリが今回、イチカに手紙を出した一番の理由はそれだ。
シカマルとの交際を誰に伝えようかと、思った時に、浮かんで来たのがイチカだった。
こういった話をイチカとするのは初めてで、どうにも恥ずかしさが勝り、手紙の最後で少しだけ報告した形になってしまったが。
キリ「報告はいけなかった?」
シカ「いや、そうじゃねぇ。俺もチョウジといのに言ってある」
いけないどころか、むしろ、自分の恋人なのだと、人に紹介されるのは嬉しい。
キリもそれは同じだったのか、相槌を打ちながらも、どこか落ち着かない様子だった。
シカ「納得しただけだから、気にすんな」
イチカがなぜ、シカマルとの修業を望んでいるのか。その理由と結びついただけだ。
どうやら、あのキリ愛好者は相当お怒りのようである。
キリ「納得?」
シカ「おう、俺も修業しねぇとな」
こちらは防御に長けた術が良いだろう。
きっと今、イチカは攻撃に特化した技を開発しているはずだ。
苦笑するシカマルに、キリはいつまでも首を傾げていた。