第89章 それぞれのご報告 ーお手紙編ー
イチカからの手紙は、10枚にも渡る長文だった。
少し丸みを帯びた癖のある文字に、懐かしさを感じる。イチカの愛らしさが現れているようだ。
半分ほどを読み終えた頃、飲み物を手にしたシカマルが戻って来る。
シカ「ん」
キリ「ありがとう」
香り高いお茶を受け取ると、シカマルはキリの隣に腰をおろした。
シカ「ずいぶん楽しそうじゃねぇか」
その問いかけに、キリはこくりと頷いた。
キリ「イチカも元気みたいで、良かった」
シカ「にしても、すげぇ量だな」
キリ「樹の里のことを凄く細かく書いてくれてて……」
本当に、一人一人の近状を伝えてくるレベルだ。
誰がどうだとか、あれもこれも書こうとして、ひどく内容が行ったり来たりしている。
離れた故郷のことを少しでもと、イチカが奮闘してくれたことが、キリの心を温めた。
キリ「また、木ノ葉に来るって」
シカ「そうか、良かったな」
ズズッと熱い茶をすすりながら、シカマルは最後のページを読むキリの横顔を見つめる。
シカ「キリは……」
キリは樹の里に行くとも、イチカが樹の里に来てとも、言わないのだろうか。
シカ(……まだ、早ぇか)
問題は解決して、キリとイチカの関係も改善されているが、それでも以前と同じではないという事だ。
二人の間に、そして樹の里に、残ってしまった感情は消えていないのだろう。
キリ「何?」
シカ「いや、キリもその量書いて、手紙出したのか?」
すると「まさか」と穏やかな声が返されて、シカマルは話が上手くそれたことに息を吐く。
シカ(その辺は、時間がかかっても仕方ねぇ。急ぐこともねぇしな)
キリ「あ、あなたの事も書いてある」
シカ「は? あいつが俺の?」