第21章 有能助手
シカ「あー……、キリ」
キリ「?」
自分の心臓の音がひどくうるさい。
少し不思議そうにこちらを見るキリと目が合って、鼓動はさらに早さを増した。
シカ「いや、今日。治療の後、この後、でどっか行かねーか」
出てきたのは言葉にもなっていない稚拙な誘い文句。
下手にもほどがあるだろう誘い文句が恥ずかしかったのか、キリにこうして声をかけること自体が恥ずかしいのか。
自分でもわからないが、これ以上とてもキリの顔を見ていられなくて、シカマルは下を向く。
シカ(やっぱ駄目か……?)
返答が返ってこなくて、そろりとキリをうかがえば、キリは先ほどと同様で不思議そうな顔をしていた。
キリ「……? 今日はシカクさんが帰ったら修行で、あなたもでしょう?」
シカ「!」
朝にすぐに終わる任務で昼前には戻ると言っていたシカクの言葉を思い出す。
そう。そうだ。そのあとは修行をおこなうと言ったシカクに、自分はわかったと返事もしていた。
そしてシカクが戻る昼前は、そう待たずとも訪れるであろう現時刻。
シカ「っ~……なんでもねえ」
間違えた。自分は激しく間違えたのだ。
自分の体温が一気に上昇したのがわかる。特に顔が熱くて仕方がない。
顔から火が出るというのはこういう事を言うのだろう。もういっそのこと、本当に火が出てくれたら良かった。
しゃがみ込んで、右手でその顔を覆う。
シカ(あり得ねー……最悪だ)
今朝の事も頭になかった自分が。