第21章 有能助手
その後も製薬を続ける二人。
慎重になり過ぎた結果、シカクの時よりずいぶん時間がかかってしまったが、ようやく最後の工程まできた。
シカ「これで終わりだ」
ふぅと息をついて、シカマルは無事に出来上がった薬を手に取った。
シカ(匂い…色、濃度……よし、合ってるな)
キリのサポートは見事なものだった。
数ある材料を順序通りに手に取って、さらに驚くことに分量まで寸分違わずに手渡してきたのだ。
こちらとしては、これほど楽なことはないのだが。今よりもまだ幼い頃、それなりに悪戦苦闘して覚えたこの難しいとされる製薬法。
ここ数ヶ月、シカクの製薬を間近で見てはいたが、自分で製薬をするのは初めてでこれでも意気込んでいたのだ。
それを5日やそこらで完璧に覚えてしまったキリに、シカマルは少し複雑な心境にもなる。
シカ「ありがとな、助かった」
キリ「……気にしないで」
ふっと視線を逸らして、出来上がったばかりの薬を塗るために子鹿の包帯をくるくると取り始めたキリ。
子鹿は元気いっぱいで、なでてくれと言わんばかりにその体を寄せてくるのに対して。
キリの包帯をとる手つきはとても繊細で、負傷した子鹿の様子を伺っているのが分かる。
シカ(なんだかんだ……すげーやさしいんだよな)
きっと、さっきもシカク不在で気負っていた自分を気遣って、サポートに入ってくれたのだろう。
そっけない言動の下に隠れたキリの優しさを節々で感じる。
その隠れてしまっているキリを自分に見せてはくれないだろうか。
シカ(もっと話がしてぇ)
キリと。二人で。