第89章 それぞれのご報告 ーお手紙編ー
イチカ「ちょっと! お願いがあるんだけど!!」
「うっわーすげぇ聞きたくねぇんだけど、それ拒否する選択肢ある?」
イチカ「ない」
「だよな」
諦めたように、お願いの内容を聞く同期に、イチカは小刀を両手にとった。
イチカ「修業に付き合って」
「は?」
イチカ「早く行くわよ!」
「いいけど、なんでまた急に」
イチカ「必殺技の練習」
「必殺技? どんな?」
イチカ「そうね、出来るだけ一撃が重いのがいいわ。頭と胴が一瞬で離れるぐらいの」
「それもう死んでんじゃん。誰に……」
その必殺技を使う気なんだと、野暮な質問は飲み込んだ。
(頑張れ……奈良シカマルって人……必殺技よけろよ……)
同期がずるずると引き摺られるようにして行った修練場では、いつまでもイチカの怒号と、同期の叫び声が響いていた。
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手紙の返事は、思っていたよりもずっと早く、キリのもとへ届いた。
キリ「ありがとう、お疲れ様」
キリは手紙を届けてくれた黒鳥に礼を告げる。
黒鳥は目を細めると、満足気に鳴き声をあげて、ボンッと小さな煙を残してこの場から姿を消した。
シカ「手紙か?」
キリ「ええ、イチカからの返事」
忍具調達のために、買い物に出ていた二人は里内で立ち止まる。
シカ「ちょっと休憩するか。そこで待ってろ、何か飲むもの買ってくる」
そう言うとシカマルは、木陰にあるベンチに指を差す。
キリ「いいの?」
シカ「おー喉乾いてたしな。なんでもいいか?」
キリ「ありがとう。任せるわ」
短い相槌を打って、背を向けたシカマルに、キリは小さく微笑んだ。
せっかくシカマルが気を遣って、手紙を読む時間をくれたのだから、有り難くそれに甘える事にする。
キリはベンチに腰をかけると、手紙の封を解いた。