第89章 それぞれのご報告 ーお手紙編ー
イチカが初めて木ノ葉に訪れた時、キリは心を潰すように生きていて。
ナガレとの騒動に助っ人に行った二度目の訪問では、状況が状況でキリとはろくに話す事も出来なかった。
イチカ(結局、私キリが笑ってるところ見てないのよね……)
以前は、優しい笑顔を向けてくれる子だったが、今はどうなっているのだろうか。
「続きは?」
イチカ「その子、紹介したいって。根が優しくて、芯の強い女の子で、体術が得意!? やだ嘘、会いたい! 一緒に修業しましょうって書いてる!」
「うわぁ……そこに修業が出てくるところが、キリらしいよな」
苦笑いを見せる同期は放っておいて、まだ見ぬキリの友人へ想いを馳せる。
イチカ(良かった……本当に良かった……!!キリのこと、どうかよろしくね……!!)
初めて木ノ葉隠れの里に行った時、世話になっている奈良家の人間は優しかったが、どうにも里にキリが馴染んでいる様子はなかった。
それが、ずっと気掛かりだったのだが、友人がいるのであれば安心だ。
キリがこう言うのだから、きっといい子なのだろう。
次に木ノ葉に訪れた際には、会えるだろうか。ひどく待ち遠しい。
【そして、もう一つ。
イチカに伝えたい事があります。】
イチカ「やだ! まだ何かあるの!! もう、キリってば楽しくやってるみたい、で良か……」
はじめのテンションはどこへいったのか。
嬉々とした表情を浮かべていたイチカは、一変して、すんっと真顔になってしまった。
その豹変具合に、同期は恐る恐る声をかける。
「お、おい? イチカ? どうした? 何て書いてたんだ?」
ちらりと無機質な瞳を同期に向けたあと、イチカは手紙を読み上げる。
イチカ「イチカも何度も会った事がある奈良シカマル、彼とこの度お付き合いをする事になりました」
「おお!? は!? キリが!? まじかよ!?」
イチカ「それでは、また………」