第4章 那田蜘蛛山
「富岡さんと名前さんは東方面、私は西方面から行きます。カナヲは隠の事後処理の護衛をお願いね」
那田蜘蛛山に着いた名前達。
しのぶが状況を判断して迅速に指示を出す。
すると名前の傍らに一匹の雀が近寄ってきた。
なにかを必死に伝えようと懸命に鳴いている。
『この子は……善逸の雀か?』
確か善逸は鎹鴉ではなく何故か雀が傍に着いていた。
善逸もこの山に居るのだろう。
鴉のように言葉が喋れないので正確な事は分からないが、善逸が窮地に居るという事は伝わった。
するとしのぶがその様子を見て近寄る。
「この子が来たのは西方面でしたね、では私が行きましょう」
しのぶなら怪我をしていても対応出来るだろう。
『よろしくお願いします』
「名前、行くぞ」
名前は善逸の事をしのぶに任せると、富岡に続いて那田蜘蛛山へと入っていった。
……
伊之助は考えていた。
目の前に居る化け物にも似た鬼をどうやって倒せるのかと。
炭治郎はこの鬼の攻撃により遠くへ飛ばされてしまい、今は伊之助一人でこの鬼と戦っている。
目玉がたくさんあって気持ちわりぃ。
頸はおろか腕さえ、刀二本使ってやっと斬れるってのに。
目玉の鬼は伊之助に一太刀食らった後、木に登り脱皮のような変化をした。
最初よりはるかに大きい体となり伊之助の前に立ちはだかる。
負ける。殺される。
どれだけ自分を奮い立たせても感じる圧倒的な力の差。
自分の攻撃は通らず、一方的に攻撃を食らう。
渾身の力を込めて技を出すも通じず、ついに伊之助の刀が折れた。
そして伊之助の体は飛ばされ、木に打ち付けられる。
「ぐっ……」
体に衝撃が走り、動く事ができない。
その間にも鬼は迫り、伊之助の首を掴みあげる。
「オレの家族に近づくなぁァァァ!!」
喉が潰れたような声が響き渡る。
それと共に伊之助の首が締め上げられ、意識が飛びそうになる。
「俺は死なねぇぇえ!!」
最後の力を振り絞り鬼の頸に刀を刺すが、硬さで刃は通らない。
首を折られる瞬間、伊之助は走馬灯を見た。
炭治郎、伊之助、藤の花の家紋の家のおばあさん。
……そして、知らない女の人。
誰だ、と思うのと同時に、首を掴む手が緩むのを感じた。