第4章 那田蜘蛛山
『炭治郎……?』
炭治郎の鎹鴉が名前の肩に留まった。
「ナタグモヤマヘ!!応援!!名前!!クモノイトデヒッパラレル!」
少し分かりにくいが、助けに来て欲しいという事だろう。
名前はお館様の指示もこれから受けるのでどうしたものかと一瞬考えた。
「那田蜘蛛山に十二鬼月が居る」
玄関からお館様との話を終えた富岡としのぶが出てきて言う。
那田蜘蛛山。
今し方炭治郎の鎹鴉が言っていた山と同じだ。
二つが同じ場所ならば話は早い。
『承知』
名前は短く答えると、炭治郎の鎹鴉にすぐに向かうと伝えた。
隣ではしのぶとカナヲが任務について話していた。
『炭治郎……』
祈るような気持ちで那田蜘蛛山へと急いだ。
……
炭治郎と伊之助は蜘蛛の糸で味方を操る女の鬼を苦戦しながら倒した所だった。
味方の鬼殺隊員がたくさん殺されている。
助けられなかった。
……今倒した鬼が言っていた。
「十二鬼月がいるわ……気をつけて」
この間名前さんが倒した十二鬼月は下弦ノ陸。
それ以上に強い鬼が居ると言う事だ。
あの時は名前さんに圧倒されていて十二鬼月の血を取り損ねてしまったが、今回倒せれば血を取る事ができる……。
そうすれば禰豆子を人間に戻す薬を作るのに一歩近づく。
……いや、今は倒す事だけを考えよう。
と
突然、遠くの方で雷が落ちたような音と地響きが聞こえた。
「今の音、雷が落ちたのか?雷雲の匂いはしないと思うけど……」
隣に居る伊之助は先の戦いで怪我を負っていた。
川辺を歩きながら炭治郎は伊之助を呼び止める。
「俺はちょっと向こうに行ってみようと思う」
「好きにしたらいいんじゃねぇのぉおお!?!?」
「伊之助は下山するんだ。山を降りて」
「何でだよ!!死ねよ!!」
「いや怪我が酷いから」
二人が言い争っていると
「!?」
突然、川岸の向こうに少女の鬼が現れた。
伊之助は姿を目に入れると一目散に鬼を追おうと走り出す。
炭治郎も続けて走るが、少女の鬼が叫ぶ。
「お父さん!!!」
その言葉と同時に、二人の目の前に何かが落ちてきた。
巨大な身体。
そしてその顔は……
「オレの家族に近づくな!!!!」
いくつもの目がある化け物だった。