第4章 那田蜘蛛山
産屋敷邸に着いた富岡と名前。
そこには蟲柱の胡蝶しのぶが先に居た。
『しのぶさん』
「あら名前さん、貴方も呼ばれていたのですね」
『はい、富岡さんと共に呼ばれました』
富岡は相変わらず無愛想にし、名前としのぶが話していると先に中へと入っていってしまった。
「お館様の話は私と富岡さんで聞きます。丁度そこにカナヲも居るので、一緒に待っていてください」
しのぶは少し離れた場所に待機している栗花落カナヲを指差した。
小さく会釈をするも返事は無い。
「では、私も行ってきますね」
しのぶはそう言い残すと産屋敷邸の中へ入っていった。
残された名前とカナヲ。
『この間はどうも』
「……」
『しのぶさんの所にずっといるのかい?』
「……」
なんかこう、すごく居ずらい。
この間の食事会は皆がいたから会話に困らなかったが、こうして二人きりになってみて分かった。
この子は自分から何も話さなかった。
『話したくないのかい?』
名前の問いかけにカナヲは懐から銅貨を取り出した。
そこには表と裏という字が刻まれている。
不思議に思う名前を他所にカナヲはそれを投げ、手の甲で受け取った。
裏、が出ていた。
「指示じゃないから」
そして初めて、言葉を発した。
『指示?……しのぶさんの指示?』
「そう、貴方と待っていろとは言われたけど、話せとは言われなかった」
そういう事か。
この子は指示や命令以外の事は全て銅貨を投げて決めているんだ。
どうしてそうなったのかは分からないが、無理に従わせられているようには見えない。
『そっか……まぁ無理に話さなくてもいいよ、いずれ自分の心の声が聞ける時が来る』
「来ないと思う」
『……そうかなぁ。来ると思うよ、例えば……大事な人が出来た時とか』
この子なりに今までそうしてきた事をいきなり変えろとは言わないが、いずれ心を動かしてくれる人が出来るだろう。
名前の、その言葉にカナヲは何も返さなかったが、少し表情が変わっているようにも見えた。
それから暫く待っていると、名前の肩に鎹鴉がとまった。
名前の鎹鴉ではない。
「名前!!竈門炭治郎カラノデンゴン!!デンゴン〜!!」