第4章 那田蜘蛛山
藤の花の家紋の家での療養を終えた炭治郎、善逸、伊之助は鎹鴉から任務を受け鬼の出る那田蜘蛛山へと向かっていた。
目的の山が見えると善逸が足を止める。
「待ってくれ、ちょっと待ってくれないか!!怖いんだ!目的地が近づいてきてとても怖い!!」
これ以上行きたくないと言わんばかりに道端に座り込む善逸。
「なに座ってんだこいつ、気持ち悪いやつだな」
「お前に言われたくねーよ猪頭!!」
善逸と伊之助が言い合っていると、炭治郎は山の方から血の匂いがしてその方向へと走り出す。
見ると山の入口に、一人の鬼殺隊員が怪我を負いながら這いつくばっていた。
「鬼殺隊員だ!なにかあったんだ!」
炭治郎が声を掛けようとするも、その瞬間、鬼殺隊員の体が何かに引っ張られるようにして浮かび上がった。
「あああ!繋がっていた!俺にも……!」
助ける術もなく、その鬼殺隊員は山の中へと消えた。
炭治郎達は息を飲んだ。
とてつもなく嫌な予感がしていた。
今しがた山へと引きずり込まれた仲間を見て、全員が時が止まったように動けないでいた。
山の木々がざわめき、一層その恐怖感を増してくる。
「……俺は、行く……」
数秒の沈黙の後、炭治郎は意を決して呟く。
善逸は驚き、伊之助は炭治郎の横に出る。
「俺が先に行く!!お前はガクガク震えながら後ろを着いてきな!!!腹が減るぜ!!!」
自身を奮い立たせるように言う伊之助に、炭治郎は少しほっとした。
「伊之助……そうだ、山に入る前に援軍を頼もう。この山からする匂い、多分俺達だけでは駄目だ」
炭治郎は鎹鴉を呼び寄せながら言う。
伊之助もその案には賛成のようだった。
「……名前さんに援軍に来て貰えるように使いをだそう」
炭治郎は鎹鴉にそう頼み飛び立たせる。
自分達に倒せなくとも、名前さんなら協力してくれると思う。
「それまで俺達でこの山で何が起こっているかを探ろう」
「指図すんじゃねーよ!!それは今俺が考えていたことだ!!」
伊之助はこんな時まで挑発的であったが、炭治郎は逆にこの空気は有難いと思った。
「行こう」
そう言うと、炭治郎と伊之助は山へと入っていった。
と。
一人残された善逸。
「え……やっぱり俺、置いてかれてる……?」