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日の守護者【鬼滅の刃】

第3章 もう一つの呼吸


『俺は継子にはなりません、富岡さん』





一年程前の話になるが。


名前の階級が甲になってすぐに、名前は水柱の富岡義勇に呼ばれた事があった。

富岡の家の居間に二人が互いに向き合って座る。
名前の言葉に部屋は重い空気が流れていた。


名前はこの時既に柱になっても良いぐらいの実力を持っていた。
それは水の呼吸の仲間として修行をしていた富岡が一番良く知っていた。
水柱の継子にならないかと言われた時、名前は一呼吸置いてからその話を断った。


「なぜだ。お前程の実力があればすぐにでも水柱になれるというのに」


来るべき時のために天の呼吸を秘密にしておきたいため。
鬼舞辻に悟られないために。
今ここで富岡に話す訳にはいかない。
これはお館様と一族の秘密であったために。


『申し訳ございません』
「そうか、気持ちは変わらないか」


普段表情を変えない富岡もこの時ばかりは少し悲しそうな表情を(名前)に見せた。

名前はその表情を見て目を細める。


『富岡さん、どうしてそんなに水柱を降りようとするのですか』

富岡の言葉からは早く名前を水柱にしたいという思いが強く感じられた。
富岡も十二分に強く、柱にまでなったというのに、名前のために席を空けたがっているように思う。


そんな富岡に名前は問う。


「俺は水柱には相応しくない」


小さく吐き出されたその言葉に、名前は理由を聞く事ができなかった。




……




『富岡さん、失礼します』


あれから一年、富岡の元にも名前の天の呼吸と柱の事は伝わっているはずだ。
蝶屋敷でしのぶに同じ水の呼吸を使う富岡とは話したのかと聞かれてハッとした。


話しておかなければと思い、名前は富岡邸を訪れていた。
また一年前と同じく、向かい合って座る。
富岡の表情はどこか怒っているようにも見えた。

『怒っておられますか』
「……ああ」
『ですよね……あの時は言えずにいたので、申し訳ございません』

また、重たい空気が流れる。



「お前は水柱になるべきだった。俺の代わりに」


富岡さんはどこか、俺ではなく



『以前、水柱に相応しくないと言いましたが……』


遠くの誰かを見ているようだった。
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