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【五条悟】運命は戻らない

第1章 #1 山奥の少女


「山から絶対に出ちゃダメよ」

彼女は母から言われた言葉【呪い】を
忠実に守っている

それが何を意味しているのかは知らずとも

母の最期の言葉だから。



鹿を家に運び終え、ふぅ、と息を吐く

そよ風に当たり目を瞑る

そろそろ鹿をお肉にしようと思った時
後ろから声がした

「なぁ、お前が綾芽?」

気配も、物音ひとつもせず現れた彼に
彼女は同様した

「おい、なんか言えよ」

全身黒ずくめ、オマケに真っ黒な
丸いサングラスをつけ、190はあるだろうかという
長身に顔を覗き込まれる

(真っ白な髪…目が青い…)

母以外の人というものを見たことがない
彼女にとっては驚き以外の何者でもなかった

「おーい、…喋れねぇのか?」

上から声が降ってきてハッと意識が戻される

(……)

彼女は喋れない

緊張や、恐怖からではない

そういう呪いが彼女には掛かっている

「なんだよ、めんどくせ」

「呪いでも掛かってんのか?」

ボソボソと彼は話し始めるが
彼女は話せないためオロオロとしてしまう

「あー、文字くらい書けんだろ」

「俺は五条、五条悟」

「ほら、ここにお前の名前書け」

そう言って五条は
ポケットからボールペンとメモ帳を取り出し
ほら、と言って押し付ける

彼女はボールペンをまじまじと眺める

そんな彼女を見て面倒くさそうに五条は

「こーやって書くんだよ、早く書け」

ぶっきらぼうに言った

サラサラとボールペンで文字を書く姿に
彼女はなるほど、と目を見開きコクコクと頷いた

そして歪な文字で綾芽 花霞と書いた

「綾芽…花霞か?」

花霞はコクコクと嬉しそうに頷いた

ここから五条と綾芽の錆びていた
歯車【運命】が回り出した

誰も知らずゆっくりと。
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