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【五条悟】運命は戻らない

第6章 #6 移り変わる心境


「大丈夫です。喋れなくてもあなたの優しさは誰かに伝わります」

──────────入学式
沢山の知らない人達に囲まれた空間

まだまだこの世界、知らないことだらけの花霞さんにはこの環境は苦しいもので眉を下げて口は固く閉ざされ、私の後ろに隠れるようにしている

この子にはまず、多くの人と関わる機会が大切だ

何も知らないままではこれからの人生も暗くなってしまう

少し不安は募るが、思い切って小学校に入れることにした

丁度、時期も時期であったし、それには五条さん含め他の夏油さんや家入さんも賛成であった

「さぁ、教室へ向かいましょう」

教室は1年6組
中には10人程既に集まっており、ガヤガヤと沢山の声が聞こえる

それを見るとやはり怖いのか隠れてしまう花霞さん。

手を引き、名前の貼ってある机へ誘導する

「花霞さんの机はここです」

そう私が言うと恐る恐る花霞さんは椅子に座る

そして膝に手を置いて縮こまっている

だんだんと教室に人が増え、声も次第に大きくなってきた

そんなところに担任の先生と思われる人が入ってくる

女の人で20代後半ぐらいだろうか
優しげな雰囲気を纏わせた女性でにこにことした表情で教室へ入ってきた

女性の方なら花霞さんも少しは安心できるだろう

「皆さん、おはようございます。
私は1年6組を担当する、佐原 美知(さはら みち)です。よろしくお願いします」

笑顔絶やさず、自己紹介する先生であったがまだ花霞さんの緊張は取り除けておらず、硬直したままであった

そんなとこに「それでは皆さんの自己紹介もしてみましょう」という声がかかる

またザワザワと話し声のする教室

不安そうにこちらをみる花霞さん

花霞さんが喋れないのは病気で一時的なものであると伝えてある

少し知り合いの医療に詳しいひとに手伝ってもらい、そう偽っている

また、戸籍も『綾芽』で通すことにした

「綾芽さん」

そう呼ばれ、花霞さんの肩がびくっ、と跳ねる

ゆっくり、立ち上がる花霞さん
しかし喋ることは出来ないためそのまま俯いてしまう

それを見て私が代わりに、と思うと

「綾芽さん」と声がかかった
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