第5章 #5 受け継がれるもの
仲良く手を繋いで歩くその2人の姿は全くもって似ては居ないものの、兄弟かのように見える
にこにこと嬉しそうにブラブラ手を揺らしてスキップする花霞
声は出せなくとも、このような仕草は五条にとって何よりの癒しのものであった
ガチャン、といつの間に作っていた合鍵でドアを開ける
「たっだいまー」
電気が消されている部屋には誰もいないようだった
「任務行ってんのか」
そう言ってパッと離す手に少し花霞は寂しくなる
リビングのソファにドカッと座る五条
静かな部屋は呼吸音と時計の針の音だけが響く
「どーしたんだよ、立ち止まって。ほら座れよ」
そう言って自分の座る隣をポンポン、と叩く五条に、少し遠慮気味に花霞は腰掛ける
「そーだな、暇だしお前の術式について教えてやるよ」
まだ、術式という言葉の意味さえ曖昧な花霞に五条は語り始める。
「お前の術式は簡単に言えば呪力で体の一部分の力を一時的に強くするってこと
お前の元の力を100%として500%まで力を増加させることができる
普通の呪術師でも呪力で身体能力を上げることは出来るけどここまで強くするのは困難だな
もちろんこれほど強い力を出すためにはある程度デメリットもある。
無理やり呪力で倍以上の力を発揮させるから使った後の体力と呪力の消費量はものすごい
消費量を軽減するには、それにお前が慣れるしかない。まずは体力付けなきゃな」
ペラペラと語り始めたはいいものの当の本人は何を言ってるのかさっぱり理解していない。
語る五条の顔を凝視しながら口をあんぐり開けている
「はっ、ブッサイクな顔だなー」
「簡単にいうと、強くなれるってわけだ
いつか分かるさ」
そう言ってポンと花霞の頭を軽く叩いて五条は立ち上がる
「そんじゃ、俺はやることがあるからな」
「ちゃんといい子でいろよ」
こくり、と頷いた花霞の頭を撫でて「じゃあな」と言って出て行った
花霞は五条の出て行ったドアをずっと眺める
そこにいた事実を思い返すように
手を伸ばした